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温もりのある光沢が美しい伊勢春慶。
その器としての魅力や使い心地はいかに?
実際に用いているお店の方にうかがいました。



和食の店

独特の温もりがあって、上品です。
野あそび棚 おかみ 降矢 まさみさん
野あそび棚
伊勢市宇治浦田1丁目11-5
TEL 0596-25-2848
営業時間:10時〜18時
(飲食は11時〜)
※無休
 

 野あそび棚は、お花見や紅葉狩りなど野あそびに出かけたときのように、気軽に季節のごはんを召し上がっていただけるところです。
 地元の良い物を紹介しようと、2008年6月のオープンから伊勢春慶を使っています。大小2種類の正方形のお膳で、大きい方は「月替り 汁かけごはん」をはじめ「松阪牛の焼肉丼」、「てこね伊勢うどん膳」などの料理をのせるお膳に、小さい方は、季節のお菓子やお飲み物などのお膳に用いています。
 良いなと感じるのは、木独特の温もりがあって上品なこと。塗りの手触りもよいですし、器があまりすべらないので使いやすいですね。一つひとつ手づくりされていますのでしっかりしていて、割れることもめったにないです。ただ扱い方によってはキズがつきやすいので、丁寧に扱うように心がけています。
 店の2階には、野あそびなどに用いられていた提重箱のギャラリーがあります。昔のものは手間をかけて作られていますので味があり、古い伊勢春慶のお重を展示しているときもありますので、ぜひご覧いただければ。



わらかいのに強さもあって、お料理が映えます。
とうふや おかみ 藤原 智子さん
とうふや
伊勢市宇治浦田1丁目4−1
TEL 0596-28-1028
営業時間:11時〜14時、
17時〜20時
土・日・祝日は11時〜20時
※無休(ただし毎月1日、毎週水曜日の夜間営業はなし)
 

 とうふやは、ただ食事をしていただくだけのお店ではなく、五十鈴川の四季折々の景色とお料理を盛る器も楽しんでいただける場所です。
 「これは伊勢春慶の器ですね。良いですね」とおっしゃるお客様もいらっしゃいますし、知らない方には「これは伊勢春慶なんですよ」とお話させていただいています。
 伊勢春慶の魅力は、やはり温かみ。やわらかい感じがしますでしょ。うちでは豆腐田楽などの器がありますが、旬菜を入れたりお豆腐を入れたりと、違う料理を入れても映えるやわらかさがあります。それでいて、あなごを丸ごと大胆に入れても耐えられるような強さもあります。

 お客様にとっては、塗りの器でお料理を食べている贅沢感もあると思います。漆器は輪島塗などが有名ですが、「伊勢春慶はもっと日用の器として使っていたんですよ」と話をすると、「へぇー」と興味を持っていただきますね。あめ色で美しいですし、手にもなじみますので触ったりもされて喜んでいただいています。
 これからも、料理も器も映えるうち独自の伊勢春慶を注文して使っていきたいですね。

 
 伊勢春慶の田楽箱は、使ううちにつやが増し、木目の風合いが美しくなる。「伊勢春慶は、使えば使うほど良いと思います。いろんな料理を盛れるので、熱いもの、冷たいものに関わりなく使っています」と料理長の千原昌也さん。
 


力は、木地が見える素朴さでしょうね。
割烹 大喜  主人 坂田 巧さん

割烹 大喜
伊勢市岩渕2丁目1-48
TEL 0596-28-0281
営業時間:11時〜21時
※無休
 

 2008年の9月頃から、伊勢志摩の旬の幸を盛り込んだ季節弁当の器に使っています。
 伊勢春慶が復活したので使おうかという話になったときに、普通の弁当よりも特徴や高級感のある季節弁当がよいと考え、寸法などはこちらで決めて注文しました。
 季節弁当にはそれまで輪島塗の弁当箱を使っていたのですが、伊勢春慶の魅力は、生地が見える素朴さでしょうね。昔は箱物などが多くて板も厚かったのですが、薄い板を使っているので非常に上品に見えますし、料理とも合わせやすいと思います。
 当初は、何回か使うと塗りがはげてくるかな、と心配もしましたが、手洗いして大事に使っていますので、2年経ちますが全然はげていません。以外と長持ちして丈夫です。
 地元の産業のものを使うのは、非常に大事だと思います。食材はなるべく地物を使いますが、器に関しては今までそれがなかったので、伊勢春慶が復活して観光客にアピールできることはうれしいです。
 お客様に女将が説明するときもあります。伊勢春慶は柿渋を使っていますから、マークに柿の文様を使っていますね。伊勢には蓮台寺柿があり、季節弁当でも使いますから、お客様に料理をご説明するとき伊勢春慶にも触れると印象深く聞いていただけます。




地のやわらかさがおとうふを引き立ててくれます。
伊勢河崎 町家とうふ
伊勢市河崎2丁目14ー12
TEL 0596-25-1028
営業時間:        
10時30分〜16時
(豆腐販売)
11時〜14時(レストラン)
※木曜定休
 

 築100年の町家を改装し、おとうふを製造直売、また料理も味わえるお店です。
 4種類ほどある「本日のおまかせ御膳」をのせるお膳は、昔の伊勢春慶くるみ膳を、特別に使い勝手の良いよう職人の方々に御無理をお願いし、製作していただきました。そのために持ち運びなどが便利で、お茶碗や白い磁器との調和が美しいです。
 「寄せとうふ」の器は、出来たての当店でしか味わえない感触のとうふを、伊勢春慶のもつ木地のやわらかさがうまくかもし出してくれています。
 漆器を扱うのは難しいというイメージがありますが、当たり前に使える、と自然に感じていただければ良いです。伊勢春慶に関心を持っていただくお客様には、すぐ近くにある工房やお店をご案内しています。




選した喫茶メニューを、伊勢春慶が一層引き立たせてくれます
商人蔵カフェ
伊勢市河崎2丁目25−32
伊勢河崎商人館 壱の蔵
TEL 0596-22-4810
営業時間 10時〜17時
定休 火曜(祝日の場合はその翌日)

 伊勢河崎商人館の壱の蔵にある憩いのカフェで、サービス時に使われているのはくるみ膳。胡桃の実の二つ割りを、四隅につけて足としているため、持ちやすく、そのまま膳をテーブルにお出ししています。手前の縁が斜めにカットされたオリジナルのデザインで、演出だけでなく、使いやすさも考慮されています。また、重ねて収納できるため場所を取りません。
 しっとりと濃厚なチーズケーキにはきび砂糖や北海道産のチーズを使い、ドリンクはコーヒーの他、誕生から100年の時を経て再びよみがえった「復刻版エスサイダー」や三重県で栽培された伊勢茶を100%使ってつくられた「伊勢の和紅茶」など、シンンプルながらも選び抜いたメニューを、伊勢春慶が一層引き立たせてくれます。



洋食の店

思いがけず感動を与える、朱塗りの器と洋の相性

白いお皿に盛り付けられる印象があるフランス料理で、テーブルを晴れやかな雰囲気にしてくれる伊勢春慶。
和の伝統とフレンチとの新しいコラボレーションがシェフの創意工夫を掻き立てています。



慶には「ハレ」の喜びと驚きをもたらしてくれる、華やかさがあります
ボンヴィヴァン シェフ 河瀬毅さん

ボンヴィヴァン
伊勢市本町20-24
TEL 0596-26-3131
営業時間:
フレンチレストラン
12時〜15時(LO 13時30分)
17時30〜21時30分(LO 19時30分)
ブラッスリー
11時30分〜14時30分(LO 13時30分)
17時30分〜21時30分(LO 19時30分)
定休 月曜(祝日は翌日)とその前日のディナー、(4月より)第3火曜

 朱塗りの赤色が華やかで、まさに「ハレ」がする器。地域の特色あるものを生かしていきたいと、以前から伊勢春慶のナプキンリングを使っていて、観光の方に伊勢のアイテムとして覚えてもらっていました。伝統を復活させ、見事に美しく仕上げられた伊勢春慶には、盛り付ける喜びがあり、地元のお客様が見えると、ふるさとの工芸品が使われていることを誇りに思ってくれるようです。
 伊勢春慶を示す焼き印は、本来すべて裏側に押されていますが、せっかくなら表に出るようにとお願いしました。プレートには店のロゴと伊勢春慶の焼き印を組み合わせ、小箱は蓋を開けて見えるところに押してもらっています。
 和食でいうところの突き出し、アミューズとコーヒーのお茶請け用、プチフールに使っています。コースの始めに出すアミューズは、店のスタイルを意識づける、勝負の一品です。コース最初と最後のみに伊勢春慶を使い、ハレの喜びと驚きのイメージを最大限に生かしています。それにアミューズを出した後のお皿も、フレンチで定番の真っ白いものではなく、茶色などのどこか和の雰囲気があるものを選んでいます。この春慶に合わせようと、料理にも創作意欲が沸いてきます。つくる側も、運ぶ人も、食べる方も、経験したことのない幸せな感覚に溢れる器です。

  • 繊細かつ素材の旨みが凝縮されたアミューズ。柔らかく煮た鶏肉の上にジャガイモをドーム型に、風味の良いチーズのシュー皮・グジェール、アオリイカのムースの上に伊勢まぐろのタルタルと答志島のうたせエビ、松阪牛の芯玉肉を燻製にした薄切り、イワシのピュレとスクランブルエッグをサンドイッチに
  • プチフールにも旬や地物を存分に。はっさくファルシー、はっさくの皮でピール、木イチゴのギボーブ、バトンマレショー、麦の穂の横に南伊勢町の小麦粉とふすまを混ぜたクッキー、カカオのメレンゲ、三重県産のゴマのクッキー、クリームブリュレは表面を焦がさずにみかんのチュールを添えて



塗りという制約があるからこそ、生まれる料理もあります
カンパーニュ シェフ 東健夫さん

カンパーニュ
伊勢市勢田町115-3
TEL 0596-29-2000
営業時間:
レストラン
12時〜13時30分(LO)
17時30分〜19時30分(LO)
カフェ
喫茶:10時30分〜16時30分(LO)
ランチ:11時30分〜14時(LO)
ディナー:17時30分〜20時(LO)
定休 火曜(祝日の場合は営業)、月曜はテイクアウトのみ

 お口はじめとお茶菓子を伊勢春慶でご用意しています。最初の一皿としては、主に乾きものや葉類をプレートに盛り付けています。木地のヒノキは柔らかく、漆塗りですしナイフやフォークは使えませんので、お箸で。食べ終わると、美しい塗りをご覧になって、「伊勢春慶ってこんなにきれいだったのね」とお褒めの言葉をいただくこともうれしいですね。
 お茶菓子は蓋を閉めた小箱でお出しするので、まるで玉手箱(宝石箱?)を開けるような楽しさも感じてもらっています。まずは目で見て、その風合いを感じてもらい、次に実際に手で触れて、なめらかな触り心地を確かめ、食後のひとときを豊かな気持ちで過ごしてくれています。
 箱は細身の小さいサイズだったので、塗師の方は通常より細い刷毛を使って、塗布する漆が垂れてしまわないように苦労されたと聞きました。そんな職人技もお伝えするようにしています。
 三重は食材の宝庫で、伊勢志摩と特にふるさと熊野の力ある素材を選りすぐり、自然からインスパイアされた料理を提供していますが、加えてその土地ならではの器を使うのも、大きな地産地消です。その器に制約があるからこそ、生まれる料理もあります。伊勢春慶は伊勢の地で使われてこそ、価値があるものだと思います。

  • アミューズは楽しむの意。アミューズグールやアミューズブーシュとも。朱塗りに緑がよく映える、アワビと無農薬野菜のサラダ仕立て
  • 蓋をあけると、プチシューの色合いにも驚きがある。緑色には蓮台寺の柿の葉を、黒は麻炭、淡いピンクにビーツと、カンパーニュの看板スイーツであるシュークリームを天然由来の素材で色付けし、3つのフレーバーに。下には氷砂糖が敷き詰められ、まさに宝石箱



勢春慶とフランス料理の組合せが、会話のきっかけになります
ル・バンボッシュ シェフ 福井隆一さん

ル・バンボッシュ
伊勢市辻久留2-10-3
TEL 0596-26-1040
営業時間:
ランチ11時30分〜14時(LO)
カフェタイム11時30分〜18時
ディナー17時30分〜20時(LO)
スイーツテイクアウト10時〜20時(LO)
定休 水曜・第3火曜

 夜のコースでアミューズとプチフールに使っていますが、アミューズが付かないコースでも、料理の顔として伊勢春慶をテーブルに置いています。実は8年前にも、春慶という工芸品があることを知ってもらえたらと、一度購入しています。現在と同じように、突き出しやお茶菓子を膳に盛りつけていました。今回はフランス料理と合わせやすいように、平らなプレートをつくっていただきましたが、角度が付いた台形になっていて、手を添えて持ちやすく、重ねて保管もできますので、サービスする側の立場も考えられています。
 地元のお客様は、フランス料理店で春慶が出てきたことに驚かれますし、たまたま食事の前に河崎で伊勢春慶を見学された観光のお客様には、伊勢の伝統ある漆器がまさかフレンチで使われるとは、と喜んでいただいたことも。フランス料理と和の工芸品の意外な組み合わせを見られたときの、あの表情はたまらないですね。伊勢春慶のインパクトは充分で、春慶が会話のきっかけとなり、ヒノキの木目から伝わるあたたかな風合い、そして料理もじっくり味わって、トータルで喜んでもらえます。器に助けられる部分もあります。洋食との相性で展開はいろいろあるのかなと思います、磁器や陶器と組み合わせてみたいですね。

  • シェフの才能や創意工夫を垣間見るアミューズ。ブルーチーズのブリュレ、松阪産の蛤バター焼き、三重県産の鶏肉を使ったテリーヌ、フォアグラ最中、アンチョビの入ったケークサレ、三重のお米「結びの舞」を使った煎餅に生ハム
  • 朱塗りに生える彩り豊かなお茶菓子。ヘーゼルナッツ、フランボワーズのマカロン、ショコラを絡めたピール、抹茶のチョコレート、型抜きチョコ、フロランタン、アプリコットゼリー、ナッツ